書き出しが印象的な小説5選 一度読んだら忘れられない!思わず続きが読みたくなるような書き出しの小説を紹介

たった一文で人生が変わる。

そういった名文との出会いを与えてくれるのも、小説や読書の魅力ですよね。

特に、名だたる文豪や作家たちは、作品と読者の劇的な出会いを演出するため、「小説の書き出し」に魂を込めて物語を紡いでいました。

本屋さんで棚の前に立ち、パラパラと本を捲る中で、書き出しの一文を読んでこの小説を買うと決めた、なんて体験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

小説の書き出しは、初対面の第一印象のようなもの。

第一印象が素敵な人に好感を覚えるように、書き出しが魅力的な小説は読みたくなってしまうもの。

本記事では、書き出しが魅力的な小説に絞って五作品、ご紹介していきます。

目次

書き出しが印象的な小説①:伊坂幸太郎『重力ピエロ』

春が二階から落ちてきた。

書き出しがお洒落な小説として有名な、伊坂幸太郎の『重力ピエロ』。 二階から春が落ちてきた状況が、いったいどんなものなのか、どうしても気になってしまいます。

春という季節のイメージも相まって、爽やかで軽妙な情景が想像されますね。

作品の内容はシリアスな描写もある重力を背負った家族の物語となっていますが、書き味のユニークな筆致、伏線の大胆な回収、印象的な台詞回しで、読み進めやすい作品となっています。

特にこの小説は、最後の一文も大変魅力的なので、ぜひ最後まで読み通してほしい一冊です。

書き出しが印象的な小説②:谷崎潤一郎「刺青」 

 其れはまだ人々が「愚」と云う貴い徳を持って居て、世の中が今のように激しく軋み合わない時分であった。

人間は古今東西いつの時代も愚かなものであると言われ続けていますが、それを美徳であると言う人は谷崎くらいのものなのではないでしょうか。

「刺青」は、肌をさされてもだえる人の姿に甘い愉悦を感じる刺青師の清吉が、宿願であった素晴らしい美女の背中に蜘蛛を彫るという筋書きの物語です。 美の世界と欲望、性の倒錯を描いた谷崎の処女作。この機会にぜひ近代文学の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょう。 

書き出しが印象的な小説③:谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』

サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいいような話だが、それでも俺がいつまでサンタなどという想像上の赤服じーさんを信じていたかと言うとこれは確信を持って言えるが最初から信じてなどいなかった。 

主人公、キョンの独白から始まるのは、大人気シリーズ『涼宮ハルヒの憂鬱』。

語り手の人物像がこの一文で自然と浮かび上がってくるような、立板を流れる水のような書き出し。小説の雰囲気を掴める名刺の役割を見事に果たしている書き出しです。

アニメ化された際にも、キョンの独白は冒頭で 1分30秒間続いています。作品にとって欠かせないパートであることがわかりますね。

主人公のちょっぴりややこしい性格、作品の世界観をも表す、まさに印象的な書き出しなのではないでしょうか。 

書き出しが印象的な小説④:綿矢りさ『蹴りたい背中』

さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。細長く、細長く。

19歳で芥川賞を受賞した綿矢りさの代表作、『蹴りたい背中』の書き出しの鮮烈さといったら!

綿矢りさは自ら「書き出しフェチ」を公言しているだけあって、どの著作の書き出しも素晴らしいものばかり。一文で読者の心を揺さぶるのが本当に上手な作家さんです。

特に、この書き出しは、10代の主人公の瑞々しい感性を繊細かつ鮮やかに描き出している、至高の書き出し。 読者は、綿矢りさのしなやかな文体の魅力が詰め込まれた作品にふさわしい始まりを楽しむことができます。

書き出しが印象的な小説⑤:太宰治『駆け込み訴え』

 申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、醜い。

『駈込み訴え』は、太宰治が聖書に書かれていることを元にして、わたしことユダが、キリストへの愛、憎しみ、葛藤と苦しみの中に生まれたすべての感情を独白する形をとって書かれた短編小説です。

「あの人は、醜い」というドキッとさせられる断言と、それがユダからキリストへの言葉だという驚きで、強く印象に残る物語と書き出しになっています。

裏切り者であるユダが訴えたのはいったい何だったのか?ぜひ読んで確かめてみてください 

まとめ

以上、年代やジャンルの違う作品五作の書き出しをご紹介しました。

ぴんと来る一文があれば、ぜひ書き出しだけでなく、その先も、楽しんでくださいね。

 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

あなたの隣の席で本と映画の話をめっちゃしてくる同級生系Vtuber。ミステリが好き。

おすすめのコンテンツの紹介動画を投稿したり、本や映画や文学について皆さんと語る配信を行ったりしています。

Twitter
https://twitter.com/kosyoyashiki

コメント

コメントする

目次